2026.10.26

採用ブランディング動画の軸を見つける

「風通しがよい」「挑戦できる」といった言葉だけでは、自社で働く姿が伝わりません。採用ブランディング動画を考えるなら、日々の行動を材料にしましょう。抽象的な魅力を撮影できる場面へ変える手順を紹介します。

結論・要点

自社らしさの軸は、現場で確かめられる行動から選びます。採用ブランディングとは、働く場として何を大切にする会社かを伝える取り組みです。本稿では、印象的な標語を作る前に、その言葉を支える仕事や経験を集める進め方を提案します。

動画の見栄えを整えることと、働く実態を説明することは分けて考えます。映像が美しくても、言葉と場面がつながらなければ、会社らしさの根拠は見えません。経営者の思い、社員の経験、現在の制度を照合し、説明できる範囲を絞りましょう。

背景:説明の不足はどこにあるか

採用コピーを考える会議では、他社にも当てはまりそうな言葉が並ぶことがあります。言葉そのものが悪いわけではありません。問題は、その会社でどう行動に表れるのかが省かれていることです。抽象語を増やすより、具体的な場面を一つ確認するほうが企画を進めやすくなります。

経営者が目指す姿と、現在の働き方が一致しない部分もあるはずです。将来像を動画で語る場合は、今の状態と区別します。理想を現在の制度や社員全員の経験であるかのように見せず、取り組んでいることとして説明する方法を考えます。

英国の人事専門機関CIPDは、従業員の経験や候補者との接点を踏まえた発信を提案しています。本稿の手順は編集部提案であり、日本の採用動画の効果を実証するものではありません。

参考資料:CIPD「Activating your employer brand to recruit and retain in a challenging climate」

具体的な進め方

ステップ1:言葉の裏側にある経験を集める

社員には「会社の魅力は何ですか」だけでなく、仕事で判断に迷った場面や、相談した経験を聞きます。「意見が言いやすい」という答えなら、どこで誰に何を伝え、その後どう扱われたかを確認します。実際の経験から、会社の言葉に対応する場面を探す作業です。

聞き取る範囲は、話しやすい社員だけに偏らないように考えます。部署や業務が違えば経験も異なります。ただし、少人数の聞き取りを社員全体の評価として扱わないでください。個人の経験と、会社の仕組みを分けることが大切です。

収集したエピソードには、本人の評価と出来事を別に記録します。「相談しやすかった」は感想であり、「定例の場で相談した」は出来事です。どちらも材料にできますが、感想だけから全社的な風土を断定しないようにします。公開できる範囲も本人と社内の確認担当に確かめます。

ステップ2:抽象語を場面へ変換する

以下は編集部提案の変換表です。抽象語、行動、場面に加え、例外や確認者をセットで扱います。表の語句は企画を考えるための例であり、特定企業の制度や実績を示すものではありません。自社で確かめた内容に置き換えて使います。

映像にできる場面がない場合は、無理に演出しないでください。本人の説明に資料や図を添える案もあります。普段行わない会議を撮影のためだけに開き、日常のように見せることは避けます。撮影上の再現を使う場合は、その位置付けが分かるようにします。

一つの言葉に場面が多数集まっても、すべて採用する必要はありません。候補者が仕事を理解するために必要か、現在も説明できるか、他の場面と役割が重複しないかで選びます。抽象語の数をそろえるのではなく、説明がつながるかを優先しましょう。

抽象語の例確かめる行動・場面例外と確認先
風通しがよい提案を相談する場面部署差を現場責任者へ確認
挑戦できる新しい仕事を試す手順任せる条件を部門長へ確認
協力を大切にする他部署との受け渡し対象業務を担当者へ確認
学びを支える助言を受けて作業を見直す現在の運用を教育担当へ確認

ステップ3:一つの軸と例外を決める

材料を並べたら、動画で中心にする軸を一つ選びます。例えば、相談しながら判断を進める仕事のあり方です。会議、引き継ぎ、振り返りといった場面が、その軸の説明になっているかを確認します。音楽やコピーは、軸が決まってから検討します。

例外を残したまま説明できる軸を選びましょう。相談の仕方が部署で異なるなら、紹介する部署の例だと分かるようにします。全社共通と言いたい場合は、複数部署での確認が必要です。広く言い切るために実態の違いを消すのではなく、表現の範囲を合わせます。

経営、人事、広報が確認する際は、同じ完成形を好むかより、どの説明を確認するかを分けます。経営の方針、制度の現状、社員発言の意味など、担当ごとの確認対象を決めます。意見がぶつかったら、表現の好みではなく元の出来事や方針に戻って整理します。

架空例で考える

架空例として、「挑戦できる会社」を伝えたい企業を考えます。聞き取りでは、新しい提案を試した社員の経験が出ました。一方、誰でも自由に予算を使える制度ではありません。そこで、提案から相談、試行までの過程を確認します。

編集部の提案例では、挑戦という言葉だけを繰り返さず、提案を持ち寄り相談する場面を軸にします。経営者は目指す姿を、社員は自分の経験を話します。両者の役割を分けることで、理想と実態を混同しない構成を目指します。採用成果を示す事例ではありません。

よくある失敗

良く見せるために、社員の言葉を会社の宣言へ広げることは避けましょう。「自分は相談できた」という発言を「誰でも相談できる会社」と編集すると意味が変わります。字幕や見出しも含めて、本人が話した範囲と対応しているかを確認します。

もう一つは、目新しいコピーを探し続けることです。独特な言い回しでなくても、現場の具体性があれば会社の仕事を説明できます。自社だけの表現を作ろうとして事実から離れるより、実際の行動に戻る時間を設けましょう。

まとめ

採用動画の軸は、標語と日常の場面を結び付けて作ります。働く人の経験を集め、経営の方針や制度と照合し、現在説明できる範囲を選びましょう。全社と部署、実態と将来像の境目を残すことも大切です。

まずは採用ページで使っている抽象語を一つ選び、変換表に記入してください。支える行動が確認できれば撮影候補に、確認できなければ聞き取りの宿題にします。コピーを増やす前に、根拠となる場面を探しましょう。

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