社員インタビュー動画の質問を設計する
社員インタビュー動画で具体的な仕事を伝えるには、質問の作り方が重要です。「やりがいは何ですか」だけで終わらず、実際の場面と判断を聞いてみましょう。候補者の判断材料を集める質問設計と、編集時の確認方法を紹介します。
結論・要点
聞きたい結論ではなく、経験した場面から質問を始めます。会社の良さを言ってもらうために誘導するのではなく、何を担当し、どこで迷い、誰と進めたかを確かめます。抽象的な答えが出ても、具体的な出来事を追加で聞く構成を提案します。
自然に話してもらうことと、準備をしないことは同じではありません。扱う仕事や質問の意図を事前に共有し、答えにくい内容を避けられるようにします。本稿は質問設計を扱います。出演者の選定や撮影協力の調整とは分けて進めてください。
背景:説明の不足はどこにあるか
「やりがい」「社風」「成長」といった問いは、答えの幅が広くなります。社員が会社の紹介文に近い言葉を選ぶと、実際の仕事が見えないまま終わることがあります。質問が悪いと決め付けず、場面を思い出す補助を加えることから始めます。
また、制作側が先に理想の回答を決めると、社員の経験がその形に合わせられてしまいます。質問票に模範解答を並べるより、確認したい事実を書きましょう。何を聞ければ採用する側の説明が具体的になるかを、企画の段階で整理します。
英国の人事専門機関CIPDは、従業員の経験や候補者との接点を踏まえた発信を提案しています。本稿の手順は編集部提案であり、日本の採用動画の効果を実証するものではありません。
参考資料:CIPD「Activating your employer brand to recruit and retain in a challenging climate」
具体的な進め方
ステップ1:最近の仕事を時系列で聞く
話せる範囲の業務を一つ選び、始まり、本人の担当、判断、連携、振り返りの順に聞きます。大きな成功談を探す必要はありません。日々の仕事にも、役割や相談方法を説明する材料があります。公開できない顧客情報などが含まれないよう、事前に範囲を確認します。
感想の後に、具体的な行動を聞きます。「やりがいがあった」という答えなら、何を担当し、どの場面でそう感じたかを尋ねます。本人がうまく言葉にできないときは、制作側が意味を決めず、話せる別の場面へ移る方法もあります。
事前の聞き取りでは、撮影で話してもよい出来事を本人に選んでもらう形を検討します。台詞を暗記してもらうためではなく、守秘や個人情報の確認と、話しやすい範囲の共有が目的です。話す内容が当日に変わった場合も、後から事実を確認する余地を残します。
ステップ2:難しさと支援を対で聞く
以下は編集部提案の質問変換表です。抽象質問を禁止するものではなく、答えを具体化する追加質問の例です。本人が経験していない内容や、答えたくない内容は扱わない前提で使ってください。
難しかったことを聞く場合は、誰かの失敗を掘り下げる方向にしないようにします。仕事上の判断や学び方を説明するために、どこで迷い、何を確認したかを聞きます。助言や資料を使った場合は、その支援が現在もあるかを別に確かめます。
質問の言い方は中立にします。「上司が助けてくれましたよね」では、肯定する答えを求める形になります。「その後、どう進めましたか」「誰かに相談しましたか」と分けて聞き、相談しなかったという答えも受け止められるようにしましょう。
| 抽象的な質問 | 追加する質問の例 | 確認する事実 |
|---|---|---|
| やりがいは何ですか | どんな作業をした時に感じましたか | 担当範囲と場面 |
| 成長できましたか | 以前と今で変わった行動は何ですか | 経験した時点 |
| 社風はどうですか | 最近相談した場面を教えてください | 個人経験と全社制度の区別 |
| 大変なことは何ですか | どう確認して進めましたか | 難しさと使った支援 |
ステップ3:編集後の意味を確認する
発言を短くする際は、主語、時点、対象となる仕事が消えていないかを確認します。特定の部署での体験を全社の制度に見せたり、過去の経験を現在の状態に見せたりしないことが大切です。字幕や見出しも含めて、元の意味と照合します。
回答しない、使わないという選択肢を残します。撮影後に説明の範囲を確認したい場合の連絡先も共有します。公開の可否や許諾の扱いは、社内の確認担当と整理してください。ここでは法律上の判断ではなく、本人の意図を確かめる制作の手順として提案しています。
確認時は「問題ありませんか」と完成動画だけを送るより、仕事の説明、個人の経験、字幕の意味など確認してほしい点を添えます。本人の感想を会社の公式説明へ変えた箇所があれば、別の事実確認が必要です。話者一人に制度の正しさまで背負わせないようにします。
架空例で考える
架空例として、「周囲に助けてもらえる会社です」という回答を考えます。聞き手は「どんな時に誰へ相談しましたか」と追加します。社員が資料作成の相談を挙げたら、何に迷い、どの助言を受けたかを聞きます。
編集部の提案例では、「協力的な社風」という見出しだけでまとめず、資料を確認してもらう仕事の場面を補います。本人が話していない感情や成果は加えません。質問から具体的な情報を集める架空例であり、採用への効果を示すものではありません。
よくある失敗
感動的なエピソードを求めすぎると、日常の仕事が脇に置かれます。候補者に必要なのは、どんな役割を持ち、どう仕事を進めるかという情報でもあります。大きな成功がなくても使えるよう、通常の業務を説明する質問を用意しておきましょう。
もう一つは、話し言葉を整える過程で本人らしさまで消すことです。言いよどみを整理することと、意味を強めることは違います。「自分はそう感じた」を「この会社はそうだ」に置き換えないよう、元の発言と編集後の表現を見比べてください。
まとめ
社員インタビューは、仕事の具体的な経験を聞く場にします。出来事、行動、判断、支援を分けて聞き、個人の感想と制度の説明を混ぜないようにしましょう。公開前には、編集によって意味が変わっていないかも確かめます。
まずは予定している質問を一つ選び、変換表を使って追加質問を作ってください。答えてほしい言葉ではなく、確認したい仕事の場面が書ければ、社員と共有する質問票の土台になります。